筋トレと呼吸の関係 トレーニング時の効果的な呼吸法とは?
トレーニングのとき、呼吸って意識してますか?
人間は、平静時は1分間に12〜15回程度の呼吸をしていますが、トレーニングで心拍数が上がれば当然呼吸回数も増えます。
そして、呼吸とは全身の筋肉を使って行われる動作であるため、呼吸のタイミングは力の発揮にも密接に影響します。
筋トレにおいて
・力を入れる時に息を吐くべきか吸うべきか?
という、呼吸法について質問される方は意外と多いんです。
今回は、筋トレと呼吸法についてご紹介します!
最も力が出るのは”息を止めたとき”
人間が最も大きな力を発揮できるのは、呼吸を止めているときです。
全力でダッシュするとき、全力でジャンプするとき、
みなさんも自然に呼吸が止まっているはずです。
筋トレにおいても、高重量のバーベルトレーニングなどでは、最も力を入れるタイミングで呼吸を止めて行います。
特に、高重量のデッドリフトやスクワットなど腰への負担が大きいトレーニングでは、息を思い切り吸い込んでから呼吸を止め、お腹の中を空気でパンパンにすることで腹圧を高めます。
腹腔内の空気の圧力が筋肉の補助となり、これによって腰椎を守るのです。
ジムに行くと、マッチョマンが腰にごついベルトを巻いていますが、あのベルトは「トレーニングベルト」や「リフティングベルト」と言って、息を吸い込んだ後にさらにベルトで締め上げることで、限界まで腹圧を高めるためのものです。
これによって腹筋群の筋力と腹腔内の空気の圧力との共同パワーで、腰椎を固定して怪我を防止するのが目的です。
呼吸を止めると血圧が上がる
筋トレにおいて、最も力を入れる瞬間に呼吸を止めて腹腔内の圧力を高める方法を「バルサルバ法」と言います。
バルサルバ法は、自分が出せる最大パワーを発揮できることが大きなメリットですが、逆にデメリットは血圧が急上昇することです。
若くて健康な方なら問題ありませんが、高血圧、血栓症、糖尿病など循環器や血管に不安を抱えている方は、絶対にバルサルバ法は行わないでください。
「力みすぎて血管が切れる」というのは、ジョークのように言われることもありますが、実際に悲惨な事故が何度も起きている症例です。
血圧の急上昇というリスクを負いたくない方は、バルサルバ法は行わずに「息を吐きながら」力を入れるようにしましょう。
リスクが少なく、効率的に筋肉を鍛える呼吸法
人間が大きな力を発揮できる順番で並べると
息を止める>息を吐く>息を吸う
という順番となります。
最も大きな力を出せるのは息を止めたときですが、それは血管へのリスクが大きいので、一般的には「力を入れる時にゆっくり息を吐くように」と指導されます。
この原理について、もう少し詳しく解説しましょう。
バーベルにしろダンベルにしろマシンにしろ自重にしろ、ウェイトトレーニングというものは全て、
「重量物を重力に逆らって持ち上げて下ろす」という動作になります。
このとき、
- 重量物を持ち上げる動作を”コンセントリック”
- 重量物をゆっくり下ろす動作を”エキセントリック”
と言います。
人間は、コンセントリックよりもエキセントリックの方が1.5倍ほど強い力を発揮できます。
ややこしい言い方になりますが、要するに
「持ち上げられる重量」よりも「ゆっくり下ろせる重量」の方が重いのです。
ウェイトトレーニングで、持ち上げた時とそれを下ろすときで重量が変わることはまずありませんから、「持ち上げることができる最大重量」でトレーニングしたとしても、それは「ゆっくり下ろすことができる最大重量」では無いのです。
つまり、筋肉は持ち上げる時は限界でも、ゆっくり下ろす時には楽をしているということ。
このギャップを埋めるためには、持ち上げる重量を少しでも増やす必要があります。
そのため、持ち上げる時には「息を吐く」事で呼吸のアシストも加えて全力で持ち上げ、それをゆっくり下ろす時には「息を吸う」事で、呼吸のハンデを与えて筋肉に楽をさせないようにするのです。
これが、筋肉に対して最も効率的に負荷を与える呼吸法という事ですね。
口呼吸か鼻呼吸か
ウェイトトレーニングは「持ち上げる時に息を吐く」「ゆっくり下ろす時に息を吸う」という事を解説してきました。
その上で、今度は「口呼吸」か「鼻呼吸」かという点です。
結論から言うと、筋トレに限らず、呼吸は「鼻呼吸」で行うべきです。
医学的な分類では、鼻は「呼吸器」ですが、口は「消化器」です。
つまり、口はそもそも呼吸をするための器官では無いのです。
鼻には鼻毛があり、さらに鼻腔内で程よく加湿されるため、外部からの細菌やウイルスの侵入を食い止めることができます。
喉にはそんなものはありませんので、口から吸った空気に良からぬものが混じっていてもダイレクトに体内に入ってきてしまいます。
このため、口呼吸から鼻呼吸に切り替えるだけで、多くの病気を予防することができます。
特にインフルエンザや風邪が流行る時期には、ジム内でも鼻呼吸を心がけるようにしましょう。
ただし、有酸素運動をする場合などは、「鼻から吸って口から吐く」というリズミカルな呼吸でも構いません。
気温の低い時期に外でランニングなどをする場合、鼻から吸った空気は鼻毛で細菌を絡め取り、さらに鼻腔内で外気を加湿し体温近い温度に温めます。
一方で、口から息を吸ってしまうと、冷たい空気がダイレクトに肺に入ってきてむせることもありますよね。
こんな時期こそ「吸う時は鼻から」は絶対の原則として心がけておきましょう。